青木 善則さん
BNI サンシャイン
BNI 東京新宿
カテゴリー:フラワービジネス
花と緑の企画屋さん「ボタニカルディレクター」として、花と緑に関する商品やサービスを企画開発し提供。そもそもこのようなビジネスモデル自体が業界内では唯一無二の存在であり、その道を開拓し、定着させることで、花と緑とそこに関わる人の可能性を引き出そうと奮闘している。
廃棄されている花の茎から生まれた植木鉢「STEMN」
不要になったら土に埋めると土に還る、新たな地球資源を一切使わない植木鉢[STEMN(ステムン)]をご存知だろうか? 廃棄された花の茎と回収した新聞紙で作られた生花業界初のエシカルな植木鉢は、ひとりの男性の「もったいない」の心から誕生した。その男性は、生花業界で新たなビジネスモデルを創っていこうと奮闘しているBNIメンバーの青木善則さんだ。
この植木鉢はBNIの活動の中で生まれたそうだが、メンバーから紹介をもらったなどの直接的なきっかけがあったわけではない。青木さん自身がBNIを通して得たGivers Gain®️の精神や、「Changing the Way the World Does Business TM(世界のビジネスのやり方を変える)」に謳われているように、ビジネスに対する認識を変えていったことで、世に誕生したのだという。
「茎も花の一部」。捨てない道を模索
長野県在住の青木さんは、花の業界に携わるようになって、2023年の今年で13年目。前職の生花店勤務の頃から、日々、廃棄されていく花の茎を見て、どうにかならないだろうかと考えていたという。
「花束のアレンジメントを作るときに、必ず必要な長さに茎を切ります。切られた茎はゴミになりますが、それはもう、毎日、大量に発生します。冷静に考えれば、お金を払って仕入れた花の一部である茎を、お金を払って廃棄しているわけです。
その廃棄の茎を“ゴミ”と言っていますが、元々は植物の一部であることは間違いないわけです。何かに使えないだろうかという思いはずっとありました」
こう語る青木さんだが、想いはあれど具現化には今ひとつピースが足りなかった。やがて、青木さん自身に転機が訪れ、2018年1月に独立、3月にBNIに加入した。今までの生花業界にはないビジネスモデルを構築し、事業に邁進する一方で、ゴミ扱いされる茎への想いはなくならなかった。
「そうこうしているうちに、時代はSDGsや環境問題への関心が高まっていきました。そして偶然、SDGsに関連する具体例が載っている本と出会ったんです。そこに、紙製品事業で有名な東京の会社が海外から廃棄されるバナナの茎を仕入れ、“バナナペーパー“として商品化した事例が載っていました。すぐに『これだ!』と思いました」
ひとりで行くよりチームで行くという発想
青木さんはすぐにその会社に、廃棄される花の茎をなんとか活かしたい、と想いを熱く綴ったメールを送った。するとすぐに返事が来て、プレゼンテーションの場が設けられ、トントン拍子に共同開発しましょうという話になった。この青木さんの一連の行動は、BNIと出会っていたからこそ成し得たことだと青木さんは言う。
「私は独立当時にBNIのGivers Gain®️という考え方に触れ、そういう価値観のもと周囲の力を借りていくんだ、と衝撃が走りました。小規模事業者は特にそうだと思いますが、みなさんの力をお借りしない限り、進めたいことがなかなか前に進みませんし、ひとりでは限界があります。
土に還る植木鉢[STEMN]が生まれたのも、BNIのパワーチームという協業の考え方や、相手にどのようにお役に立てるかという精神が自分の中にインストールされていたので行動できたと実感しています。それがなければ、さきほどお話しした本を読んでも、問い合わせをしてみようとはならなかったと思います」
有名な企業が、突然舞い込んできた1本のメールに書かれてある想いに惹かれ、話を聞いてみたいとなり、ついには共同で商品開発までするというケースは稀だろう。そんなミラクルが起きたのは、青木さんの想いの強さとひらめきを見逃さない行動力に起因しているが、その行動の根底にはBNIで培ったGivers Gain®️の精神が存在していた。
子どもたちに自然のサイクルを伝える活動を
現在、[STEMN]は、コンセプトに共感した生花店に卸している。想いの共有・共感を重視しているのは、茎を無駄にしない活動を広めていきたいからだ。そのほか、子ども教育現場に導入するために、継続可能な仕組みの構築にも力を入れている。
「子どもたちに伝えたいことが2つあります。まずは、[STEMN]の考え方やそもそもの成り立ちです。そして、製造工程などの社会構造に対する学びです。例えば理科の授業で朝顔などの植物の種苗を[STEMN]に植え、夏休みにその成長を観察し、最後に不要になったら[STEMN]を土に埋めて分解されるところまで観察をするとか。
よく、小学生の保護者の方に、夏休みの宿題で育てた朝顔が枯れ、残ったプラスチックの植木鉢の処分に困るという声を聞きますから、その解決策にもなると思います。
また、総合学習として、商品がどのようにして誕生するのかを伝えられるので、社会を知るいい機会になると思います」
そして、子どもたちの前で、[STEMN]のストーリーを語ってほしいという依頼もあるとのことで、この先、青木さんの活動はさらに広がっていくだろう。
文=国場みの