継ぐ覚悟が、人を信じる力を育てた。経営者として進む道。

2025/12/30

長谷川 大祐(はせがわ だいすけ)
チャプター:BNI New Style(名古屋南)
カテゴリー:個性と美意識を形にするオーダーキッチン

長谷川大祐さん(以下:長谷川さん)は、祖父の代から続く板金会社を3代目として引き継ぐ予定の後継者だ。23歳でオーダーキッチン事業を立ち上げ、8年かけて事業転換を進めてきた。その過程で、プレイヤーから経営者へ視点を切り替えていく中、BNIとの出会いが大きな転機となった。

裕福な家庭に育ち、やや傲慢だった子ども時代。そこから幾度もの挫折を経験し、「人間味のある人に、人はついてくる」という気づきに辿り着いた。
現在は「15年で50億」という目標を掲げ、「この仕事は天職」と語る長谷川さんの歩みには、次期経営者としての成長と、人としての深化が静かに刻まれている。

早すぎた挫折が、経営者マインドを育てた。

長谷川さんの原点には、経営者として走り続けた祖父の姿がある。経営が好調だった時代に生まれ、大きな家で育った長谷川さんは、幼い頃から「経営者ってかっこいい」と憧れを抱いていた。学校では学級委員長やリーダー役を任されることが多く、自然と人の前に立つ役割を担っていった。

しかし、順調に見えた幼少期にも壁があった。
それが「人がついてこない」という悩みだった。


「もっと頑張れば、人はついてきてくれるんだろうか?」
そう自問しながら、「どうすれば人に寄り添えるのか」を何度も試行錯誤した。この“早すぎる挫折”と内省の積み重ねが、後のリーダーとしての器を静かに育てていった。

転機は小学校高学年で出会った、三浦綾子の小説『氷点』。
作中の「汝の敵を愛せよ」という言葉は、幼い心に強烈な印象を残した。それはやがて、

「対立する相手こそ、理解しようとしなければならない」

という価値観の核となり、今の長谷川さんの人柄につながっている。

プレイヤーとして成功したが、経営者としてはどうなのか。

祖父の代から続く板金業が時代とともに縮小し始めた頃、長谷川さんはオーダーキッチン事業を立ち上げた。一点物の高級キッチンは支持を集め、落ち込んでいた売上はV字回復へ。しかし、プレイヤーとしての成功とは裏腹に、“経営者としての壁”に直面することになる。

50億という目標を掲げたとき、採用、戦略、経営相談など、必要なリソースが社内外にほとんどないことに気づいた。仕事はあるのに、自分の手は120%埋まっていて、人を増やす基盤がない。まさに八方塞がりの状況だった。

必要なパーツが揃っていく。BNIがビジネスを加速させた。

転機は、BNIへの入会だった。

「何でも自分でやらなければならない」と思いこんでいた意識が、「仲間の力を借りてもいい」という発想へと変わった。BNIでホームページ、採用、契約、広報など、これまで自己流で補ってきた経営に必要な“パーツ”が次々と揃っていった。

メンバーから紹介された採用サポートによって、応募は1日1件以上に。新ショールームの開設時には弁護士メンバーに契約書を相談できた。専門家の力が自然と応援してくれる環境が整い、ビジネスが加速していったのだ。

さらに、BNIで学んだ「ギバーズゲイン(与える者が得る)」の精神は、自社の従業員教育にも取り入れている。長谷川さんにとってBNIは、単なるビジネスネットワークではなく、組織文化を形づくる場となっていった。

ビジネスも、人間性も、高みを目指す。

チャプターの未来について伺うと、長谷川さんはこう語った。

「『紹介しよう』ではなく、『この分野ならこの人しかいない』と言われる集団にしたい。質の高いメンバーが揃うことを大切にしています」

自身のビジネスについても、「15年で50億」という目標のもと、名古屋から東京、さらに大阪へと展開を見据えている。人材育成と採用を進めながら、次のステージへ着実に歩みを進めている。

そして、会社の未来についてはこう続けた。

「会社の売却は考えていません。次の世代へ継いでいきたい。息子が育ったり、従業員が育ったり。次の種が芽吹いていくことが楽しみです」

幼い頃に抱いた「敵こそ愛すべき存在」という価値観は、今も彼の中で静かに息づいている。
長谷川さんの未来には、プロフェッショナルとしての矜持と、人を信じ続ける温かさが共存している。

文=名城政也