メンタリングによって得られること

2024/06/18

自分自身のスキルを高めたいのであれば、誰かに教えることだということはよく知られています。誰かを育て、新たな学びをサポートすることで、その人の人生を変える手伝いができるのです。さらに、それを行うことで自分自身のスキルも一緒に向上していることに気付くかもしれません!メンタリングは、成長と学びの相互的な旅であり、メンターとメンティー双方を豊かにする成長プロセスなのです。

メンタリングの本質は、ビジネスの世界において過去の自分の写し鏡かもしれない誰かを、後押しする機会であることを認識することにあります。メンターとしての役割を受け入れることは、知識や見識を無私無欲で共有し、一方でかつて自分が遭遇したような落とし穴を避けて通る手助けをしながら、相手を成功へと導くことを意味します。他の誰かに教えることは、あなたがこれまでに学んだことを思い返す役割も果たし、忘れてしまったかもしれない分野に再度目を向けることにもなります。

チェスクラブ

私の著書「The Networking Mentor」の中で、10歳の息子が所属するチェスクラブのコーチをする男性の話を紹介しています。実は、それは私の話なのです。私は、息子が通う小学校のチェスクラブのコーチになったのですが、「チェスは得意だし、簡単なことだろう」と思っていました。そして気付いたことが、私は、これまでチェスというゲームを学んだことはなく、高校の時に1冊の本を読んであとは全て独学でやってきたということでした。とはいえ、子どもたちにその方法では教えられません。チェスの手筋を知っていないといけないわけです。従って、子どもたちに指導するために私はフォーク、スキュア、ピン、ラダーといったチェス用語を学ぶ必要がありました。おかしなことに私はチェスの腕前はかなりのもので、友人と定期的に対戦していました。ある日彼から「おいおい、どうしたんだ?」と言われ、私は「何のことだ?」と聞いたところ、彼は「チェスの腕をあげたな」と言いました。私が「10歳の子どもたちに教えているんだよ」と言うと、彼は「いや、そうじゃなくて、本当に何をしてるの?」と聞かれたので、私は「冗談抜きで、10歳の子どもたちを教えているんだ」と答えました。

私がチェスクラブの手伝いを申し出たのは、息子や彼の友だちと一緒に時間を過ごせたらいいなと思ったからでした。子どもたちを教えることで、自分が上達することなんて思ってもいませんでした!小さなチェス愛好家たちを助けることで、自分の腕を磨く必要があり、これまで何年もの間、感覚的にやってきた手筋や戦略の名前を学ぶために宿題をする必要がありました。私は、小学生の子どもたちを教えることで自分の腕前が上がったことに驚きましたし、同じく友人も驚いていました。

時間への投資

「メンターをやるような時間がない」と言う人もいます。そのような人たちに対しては、「可能な限り、時間を作る方法を見つけるように」と言います。というのも、私が誰かのメンターになるたびに、それが自分の学びになってきたからです。私がメンタリングしていた人たちから相談ごとがあれば、常にその内容を調べ自分のファイルに目を通し、その問題を解決するために何か提供できることはないか考えていました。彼らを助けながら、私自身が向上していることに気付いていました。

人にメンタリングしている時間がないと言う人たちには、その考えを改めるよう促します。メンタリングは、単に時間を充てるということではありません。メンターとメンティー双方にとって公私に渡る成長への投資なのです。ネットワーキングをより良くするためのメンタリングも同じことが言えます。

ネットワーキングとメンタリング

優れたネットワーカーに育てるためにメンタリングするプロセスは、メンティーだけでなく、メンターにとっても有益なことです。私は、子どもたちにチェスの戦略を指導するだけで、自分の技量も磨かざるを得なくなったように、ネットワーキングのメンターとして、過去に学んだ原則を改めて再考することや、疎かにしていたことを再活性化させる役割があります。そして、人が成長したり、目標を達成し成功を収める姿を見ることは大きな満足につながります。

メンタリングの関係は、その関係性に継続的に価値を受けたり提供したりする限り機能します。私自身、個人的にメンティーとして始まったメンタリングの関係が、時間の経過とともに特定の問題について私がメンターになったということがありました。長い時間をかけ友情関係が形成されたときでした。理想的には、深く強いメンタリング関係は、持続的なつながりや友情に発展していきます。ビジネスネットワーキングの領域においては、メンタリングは、双方にとってのベネフィットを生み出します。

あなたは誰のストーリーに登場していますか?

私たち一人ひとりに、それぞれの人生に影響を与えた人がいます。私たちの物語の中には、自らが選んだ道に影響を与えたり、自分自身で道を切り開くために励ましてくれた人がいます。このような人たちは、私たちが現在に至るまでに出会ったメンターであり、メンターから受けた影響によって、人生が変わる可能性があります。メンタリング関係に時間を割き、注意を向けることで、単なる金銭的な利益を超える、深く強力で有意義な利益を双方が得ることになります。成熟し、より経験を積むにつれて、私たちはメンティーからメンターになる機会があります。

私たちは皆、自分のストーリーに登場する人がいます。人をメンタリングする時、本当に心に響くのは、あなたは誰のストーリーの中に存在していますか?誰の人生に影響を与えましたか?と聞いてみることだと信じています。それは、ギバーズゲイン®の考え方の一部でもあるのです。与えたものは戻ってくるという考え方です。誰かが私を助けてくれたのだから、今度は私がその人、または別の誰かの成功のために手を貸します。それは、他の誰かの人生をあなたが変えることであり、有意義な人生を生み出すことになるのです。

おそらく、あなたのことを既にメンターだと考えている人や、あるいはあなたがメンターになりたいと思う人(あなたが自分の仕事人生をスタートした時のことを思い出させるような人)がいるかもしれません。それとも、あなたのビジネスネットワーキンググループの新メンバーで誰かの指導や成功のための最善の方法が共有されることを必要としている人かもしれません。もしそうであれば、積極的なメンターになれる機会を逃さないようにしましょう。

彼らには、あなたの経験や助言、物事の考え方から得られるものがあります。あなたの励ましは、彼らの旅において彼らが自信を持って道を歩む手助けになります。あなた方は互いに、それぞれに有益で長続きするビジネス関係を構築しながら、スキルの向上を実感することができます。

無欲であなたの豊富な知識を共有し、人の成功を手伝い、あなたが過去にした同じ間違いをしないよう手助けすることで、彼らにとっても、そしてあなたにとっても非常に大きな利益を得ることができます。私は、メンターの力が人々のストーリーにポジティブな変化をもたらすと信じています。

あなたのメンターについてのストーリーはありますか?これまで誰かのメンターになったことはありますか?お話をぜひお聞かせください。

訳=川崎あゆみ