アンチBNIとして10年以上。 気づけばファンになり、伝説まで創り出していた。

2026/10/20

田路 和也(とうじ かずや)
チャプター:ZEN(横浜セントラル)
カテゴリ:伝説を創る社外営業部長、銀座一等地のイベントスペース

 田路和也さん(以下、田路さん)は、銀座一等地のイベントスペースを提供する「タイムリッチ銀座」を運営し、以前はBNI APOLLO、現在はBNI ZENに所属している。ビデオコンテスト2026では、BNIを通じて自身の事業が広がったことや、チャプターの魅力をビジターに体験してもらう特別なイベント「BOD(Business Open Day)」の運営を通じて得た変化を語り、4位に選ばれた。(動画はこちら)

 しかし、田路さんは最初からBNIに前向きだったわけではない。むしろ、BNIに苦手意識を持ち、10年以上にわたって距離を置いていた。

BNIから距離を置いて10年。先に受け取った「Give」が、心を動かした。

 10年以上前、ビジターとして複数のチャプターに参加した経験がある。当時は対面開催で、朝早い時間帯から始まるスタイルだった。田路さんにとって、その印象は決して良いものではなかった。紹介された理由にも違和感があった。自分のために誘われたというより、ビジター紹介数のために呼ばれたように感じたからである。

 さらに、交わされるリファーラルの内容を見て、自分の事業には合わないと感じた。「自分にとっては費用対効果も時間対効果も合わない」そう判断し、その後10年ほどBNIから距離を置くことになる。

 転機となったのは、2021年に始めたタイムリッチ銀座の事業だ。銀座の一等地にあるスペースを活用してもらうには、多くの事業者との接点が必要だったのだ。そのために数々の経営者団体、交流会に顔を出したが、決定打にはならなかった。

 そんな時、再びBNIに誘われる。これまでの経験から「BNIはお断りしている」と伝えた田路さんに対し、オンライン化していること、新しくBNI APOLLOを立ち上げることなどを説明され、一度だけ見てみることに。すると、チャプターの立ち上げ準備会に参加した4日後、メンバーがタイムリッチ銀座を見学し、その場で契約を決めてくれた。自分が何かを与えるより先に、メンバーから受け取った「Give」が、田路さんのBNI活動の始まりとなった。

何度も受け取った「Give」に、心が動いた。「このメンバーのために頑張ろう」

 加入後、田路さんは最初からBNIに強くコミットしていたわけではない。当時は1年で退会を予定していたほどだ。

 大きく気持ちが変わったのは、加入から8か月ほど経った2024年3月。初めてBOD実行委員長を務めた時である。田路さん自身、積極的にやりたかったわけではない。それでも、どうせ辞めるかもしれないなら、最後くらい頑張ってみようと引き受けた。

 実際に始めてみると、予想は大きく変わった。「何か手伝いましょうか」そう声をかけてくれるメンバーが多く、楽しく進めることができたのだ。田路さんは、それまで多くの経営者団体に関わってきた。イベントの実行委員を務めても、一部の人だけが動き、周囲が協力してくれない場面も見てきた。

 しかし、BNI APOLLOは違った。みんなが支えてくれた。「こんなに良い人たちとチームを組んでいたのか」その実感が、田路さんのBNIへの見方を変えていった。

全国180名のプレジデントと1to1。BNIを最大限に活用するために、可能性を広げていった。

 BNI APOLLOのメンバーに、全国へと広がるビジネスの機会を届けたい。そう考えた田路さんは、プレジデント時代、全国180名のプレジデントと1to1を行った。オンライン化によって、他リージョンや他チャプターとの交流は以前より容易になっている。その環境を最大限に活かそうと考えたのだ。

 すると「横浜のプレジデントが全国のプレジデントと1to1をしている」と、その取り組みが知られるようになり、次々と紹介が生まれた。1to1では、お互いのメンバーリストを交換し、このメンバーとこのメンバーは合いそうだと話し合った。プレジデント同士がつながることで、BNI APOLLOのメンバーも全国にコネクションを持てるようになっていったのだ。その結果、リファーラルの金額も大きくなり、メンバー数も50名を超えるまでに成長した。

41名中24名が加入、辞退者ゼロ。綿密に設計された「伝説のBOD」

 2025年5月、田路さんはディレクターに就任する。BODでの取り組みが評価され、そのノウハウを広く伝えてほしいと依頼を受けた。だからこそ、まずはBNI APOLLOのBODで、さらなる成果を示したいと考えた。

 そして2025年7月、田路さんは4度目のBODで再び実行委員長を務める。結果は、41名のビジター参加者のうち、24名が加入。加入率58.5%。申し込み後の辞退者ゼロ。この成果はすぐに広がり、他リージョンから講演依頼を受けるまでになった。

 現在、そのノウハウは横浜セントラルリージョン内にも広がり、加入率50%を超えるBODが相次いでいる。

 このとき、田路さんが掲げたのは、「エンタメBOD」だった。笑いあり、涙あり。会場にいる全員のワクワクが止まらない6時間を目指したのである。ただし、当日だけを盛り上げたわけではない。成功の背景には、プレジデント時代からの土台づくりがあった。

 特に重視したのが、チャプターのUSP設計である。全国180名のプレジデントと1to1をする中で、田路さんは必ずと言ってよいほど「あなたのチャプターは、他と何が違うのか」と尋ねていた。すると、多くのチャプターが「仲が良い」と答える。しかし、「仲が良い」だけでは、他のチャプターとの違いを明確に示すことは難しい。そこでBNI APOLLOが目指したのは、ただ仲が良い場所ではない。すべてのメンバーがビジネスの機会を得られること。誰もがリファーラルを受け取れる可能性を高めること。そして、「あなたのビジネスが拡大するから参加してほしい」と言える場所であることだった。

 こうして、BODが単なる説明会ではなく、チャプターの魅力を数字と空気感の両方で体験してもらう場となったのだ。

BNIの価値は、紹介だけではない。学びが、信頼と化学反応を生んでいく。

 BNIというと、紹介によってビジネスが広がる場だと捉えられやすい。もちろん、それは大きな価値である。しかし田路さんは、BNIに深く関わる中で、紹介が生まれる前に必要なものがあると感じるようになった。それが、共通言語だ。

 加入当初、田路さんはトレーニングを積極的に受けていたわけではなかった。もともと企業向けの営業研修の講師を務めていたこともあり、自分には必要ないだろうと考えていたからだ。

 しかし実際に受けてみると、その印象は大きく変わった。時間や費用に対して、得られる学びの価値が高く、自身の研修事業と比べても、BNIのトレーニングは最大の商売敵になるのではないかと危機感を抱くほどだった。

 ただ、田路さんがトレーニングに価値を感じた理由は、知識の量だけではない。プレジデントを経験する中で、チャプターが一つの方向へ進むには、メンバー同士が同じ言葉でBNIを理解している必要があると実感した。1to1、リファーラル、Givers Gain®、チャプター運営。それぞれの意味をメンバーが同じ温度感で理解しているからこそ、信頼関係が深まり、紹介も生まれやすくなる。つまり、トレーニングは単なる勉強の場ではない。チャプターの中に共通言語をつくり、メンバー同士が同じ方向を向くための土台でもある。

  この共通言語があるからこそ、立場や業種が異なる人たちも、同じ方向を向いて関係を築くことができる。田路さんは、BNIの特徴の一つは、経営者だけの集まりではないことだと考えている。経営者だけが集まる場では、似た立場の人同士でまとまりやすい。一方、BNIには会社員も参加できる。中小企業の経営者と、大企業の営業担当者や幹部が同じ場で関係を築くことで、これまでになかったリファーラルが生まれる可能性があるのだ。立場も業種も異なる人たちが、共通言語を持って関係を築く。そこに、BNIならではの化学反応がある。

BNIは、生き方をも変える。

 田路さんは、BNIを「日々の行動が信頼となり、その差が成果に表れる“信頼獲得ゲーム”」と表現する。

 その言葉を裏づけるように、自身の事業でも成果を上げている。

 プレジデント時代に全国のメンバーと1to1を重ねたこともあり、関連事業だけで1,800万円の売上につながった。営業コンサルや顧問の領域でも、全国に広がる人脈や提供価値を背景に、顧問料の引き上げも実現した。

 現在は4事業7サービスを展開。口コミや紹介を中心に顧客を獲得し、固定費を抑えた経営を実現している。

 さらに、BNIでの出会いは仕事だけにとどまらない。趣味であるお笑い、阪神タイガース、乃木坂46とのつながりも、BNIを通じて広がっていった。かつては観客席から眺めていた人たちと、一緒に仕事ができるようになったのだ。

 もはやBNIは、田路さんにとってビジネスの成果だけでなく、生き方そのものを変える場になっていった。

文=名城政也