創業手帳株式会社 代表取締役社長「大久保 幸世(おおくぼ こうせい)」さんと大野真徳ナショナルディレクターが対談を行った。
創業し始めの企業の様々な悩みを解決する大久保さんの仕事は、これから企業を拡大していきたいと思う経営者にとって、大きなヒントとなるだろう。以下では、3つのテーマに分けて解説していく。
【創業手帳株式会社 代表取締役社長 大久保 幸世さんプロフィール】
大手ITベンチャー役員としての勤務時代、多くの起業家をサポートするなかで「創業後に困る内容が共通している」と気づき、会社のガイドブック「創業手帳」を考案。
印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え”起業コンシェルジュ”創業手帳アプリの開発や起業無料相談、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。
創業手帳を始めた当時と今までの変化
大野真徳(以下:大野):創業手帳とはどんなものですか?
大久保 幸世(以下:大久保):創業手帳は「起業して何をやるかわからない」とか「税金を支払うタイミング」など、そういった情報を集めている内容で、会社の母子手帳とも呼ばれています。2014年に作り、無料でお渡ししています。
大野:創業手帳を始めたきっかけについて教えてください
大久保:当時、ITベンチャーの役員をしていて、色んな会社を支援していました。そのなかで様々な質問が寄せられていたのですが、どの会社も悩んでいることって同じだったんですよね。そこから「日本には同じ悩みを持つ経営者が多いのではないか?」と気づき、創業手帳を作るきっかけになりました。さらに、調べたところ、日本では毎月約1万社が起業していると知ったので、需要があるはずだと思いました。
大野:創業手帳を始めたのは2014年ということですが、これまでに変化はありましたか?
大久保:我々としては、紙媒体は1万部から1万5,000部。Web媒体は現在120万のアクセスがありますね。
世の中の変化としては、そこまで大きく変わっていません。不思議なことに、毎月約1万社が起業しているっていうのは、大きく変動していないんです。変わったことと言えば、必要な資本金ですね。シェアオフィスやクラウドサービスなどが多くなったので、最初にかかる初期資金は下がっている傾向です。
また、近年では若年層の起業が多くなっているように見えますが、若い人口がそもそも減っているので、相対的には年齢層も変わっていません。ただ、若くしての起業や、女性の起業というのは、昔と比べて変わったように思います。
経営者の課題解決
大野:個人事業主から法人成りする人に、大久保さんの視点からのアドバイスはありますか?
大久保:事業を伸ばすつもりであれば、やはり株式会社がおすすめですね。信用力が増しますし、株式による資金調達もできるようになります。ただ、デメリットとして会計の帳簿を作るのが大変です。法人になると書類が増えるので、税理士さんに依頼する場合の費用も増えます。会計上の負担は増えますね。
大野:資金面での課題や解決してきた方法を教えてください。
大久保:創業手帳の統計によると、三分の二が、最初に経営計画を作ったけど、支出が多くなってしまったという悩みが多いです。
ここで知っておいてほしいのは、資金調達の方法です。大きく分けて、創業融資と銀行からの借り入れがありますが、銀行は実績が大事。一方で、創業融資っていうのは、創業を支援しているので、実績がない方がプラスになるんですよね。人によっては創業融資を実績を作ってから検討してしまうのですが、実は実績を作ってしまうのは間違いで、実績がない方が条件が良くなります。
大野:自己資金でつなげるとしても、早めに創業融資をうけたほうが良いということですか?
大久保:そうですね。間違いなく、むこう三年実績が出るまでは、創業融資が一番金利条件が良いです。創業期の特権が一番有利になるのが創業直後ですね。昔は「借入を増やさないようにしろ」みたいな流れがありましたけど、その当時は、金利が高かったからであって、今はゼロ金利などもあります。昔ならば経営を圧迫する可能性がありましたが、現在は金利のコストが低いので、借りれるときに借りた方が良いです。
大野:集客についての課題や、その解決方法について教えてください。
大久保:事業の種類によって異なるのですが、世の中にない新しい製品を売るときは、最初の一人のお客様をとるのが難しく、一件目が大事。二件目は簡単という流れがあります。これは、創業手帳で様々な人へ取材したときにわかりました。全く違う種類でも、ビジネスモデルが同じ人は、同じことを言いますね。
また、ITなどの業界については「会いに行くこと」が大事です。たとえば、アメリカなどは国土が広いからインターネットでの営業がメインになります。ただ、日本は人が密集しているから、会いに行った方が良いのです。
調べたところ、東京はもちろん、地方の政令指定都市などは、狭いところに人とお金が密集しているので、上手くコミュニティに入ると効果が高くなります。日本のIT企業で成功している会社は、リアルなネットワーキングに力を入れている傾向がありますね。それこそ、BNI活動のようなものは、効果があるのではないかと思います。
大野:人脈活動の価値は、やはり高いですか?
大久保:私であれば「創業活動」というシャツを着ているのですが、これはリアルな活動のための武器です。最初に会った人に必ず覚えてもらえますからね。そして、さらに誰かに伝えてもらう。誰かに伝えてもらうって最強のマーケティングであり、本質ですよね。それを発信するには”メッセージ”が大事。自分のやりたいことやミッションに近いことを、一言で言える短い言葉にして繰り返し伝えると、伝わりやすくなります。
大野:チームの作り方に悩んでいる人にできるアドバイスはありますか?
大久保:昔に比べて採用は難しくなっていますね。昔は、若い人を大量採用するようなベンチャー企業が強かったのですが、今ではそのやり方は通用しません。やはり人を一人採用するのって、採用やマネジメント、教育などでコストがかかるので大変です。なので、組織を作る場合は、まずアウトソーシングでどこまでいけるかを考えた方が良いです。
また”人手”として採用するのではなく、人柄や性格などを見た方が良いですね。人柄が良ければ能力も上がっていくので、とくに創業スタート時期には、人柄を大事にした方が良いです。
大野: 創業初期はアウトソーシングを軸に固定費を抑えるのが大事ってことですね。
創業を支援する力を借りることで企業は大きくなれる
大久保 幸世さんと大野真徳の対談から「起業で悩むことは同じ」「それに対してサポートできる環境は十分にある」ということが、わかったのではないだろうか。形は違うにせよ、起業を手助けし大きくしていくという目的では、創業手帳もBNIも同じだと言える。実際に、創業手帳のなかにもBNIの話は入っている。
起業や法人成り、事業拡大など、経営にあたってつまづくことや不安になること、知らないことも多いだろう。しかし、それらをサポートできるサービスは世の中にいくつもある。ぜひ本記事の読者も、一人で悩まず、様々な力を借りながら、企業を大きくしていってほしい。

文=名城政也